レター # 99. 9月17日(水) 南半球は反対の話
今年の十五夜は9月14日。そう、3日前の日曜日だった。オーストラリアでも中国系の人たちの間では“中秋の名月”を祝う風習は根付いているようで、我が家でも密かに楽しみにしていた。
今までは、この時期になるとあまり深く考えもせずにただ「もう秋だなー」などと思ったものだったが、今年は違う。南半球で「やっと春だな!」と思いながら見上げる初めての十五夜となるからだ。
……のはずだったが、残念ながら日曜日のアデレードは荒天。台風を思わせる強風に吹き飛ばされそうになりながら夜空を見るも、ただ花粉を鼻に招き入れて苦しくなっただけとなり、敢え無く退散。くしゃみに耐えながら、翌日に期待を持ち越すこととした。
翌15日の月曜日の朝になっても強風は収まらず、おまけに寒くて雹(ひょう)まで降り積もる始末。
「今夜もダメかな」と思っていたところに、呼び鈴の付いていない我が家のドアが「ドン、ドン」と大きくノックされた。恐る恐るドアを開けてみると、音の主は月でも花粉でもなく、妻が20年近くも前にお世話になっていたオージーのホストファミリーのお父さん、お母さんだった。
雹(ひょう)が積もったのを見たのは初めてだ
今は既にリタイアし、オーストラリア中をキャンピングカーを引いて旅して回るという羨ましい生活を送っている夫妻が、その旅の途中で我が家に立ち寄ってくれたのだった。あまりに突然の出来事に、我が家の中は正に一足早く月からウサギが飛び出してきたような嬉しい騒ぎとなった。妻と私にとっては9年ぶりの再会となり、ヒヨとオトにとってはもちろん初対面だ。白い髭がトレードマークのお父さんは2人にとってはサンタクロースに見えたらしく、すぐに馴染んで楽しく遊んでもらっていた。子供にとっては“月よりダンゴ、ダンゴよりサンタ”といったところなのだろう。
突然やってきたオーストラリアのお父さん、お母さん
あっという間に夕方になり、急きょ現れたオーストラリアのおじいちゃん、おばあちゃんは、また次の日に会う約束をしてキャラバンパーク(キャンピングカーで宿泊する公園)に帰っていった。
そしてサンタクロースは十五夜をもプレゼントしてくれたのだった。
夜空には丸々とした満月がポッカリと浮かびあがっていた。1日遅れだがとてもきれいだ。南半球の寒空のもとで見る“ほぼ十五夜”はなかなか風情があるが、それは丸くてきれいなだけではない。実は月の“模様”は北半球にある日本と南半球のオーストラリアでは、上下逆さまに見えているのだ。そのため、日本ではウサギが立って餅をついているように見えるときは、オーストラリアではウサギは逆立ちして餅つきをしていることになる。ウサギも大変だ。
アデレードで見た月。ウサギはどこ?
少し調べてみると、どうやら月はほぼ天の赤道上を移動しているように見えるため、北半球から南を向いて見たときと、南半球から北を向いて見たときとでは、月の模様が上下逆さまに見えることになるのだそうだ。さらにそれだけではなく、同じ日の月の欠け具合も、北半球と南半球とでは右と左が反対(左右非対称)に見えることになるという。
これは、なかなかおもしろい体験だ。
だが、悲しいかな、日本で見ていた月の模様が今となっては思い出せない。月の模様がウサギの餅つきに見えたこともない……。
ところで、オーストラリアでは“反対になる”ものは他にもある。
よく知られているのは、洗面台などの排水溝に水が落ちていくときに見られる“渦”だ。
地球の自転の影響によって、日本だと時計回りの“渦”が、オーストラリアでは反時計回りとなる。
あと、北の方が暖かいことも日本とは反対だ。オーストラリアで部屋の配置などを考えるときは北と南に要注意だ。私の、一見明るく聞こえる“南向きの仕事部屋”は寒い。冬ばかりでなく春となった今でも、とても寒い。お寒いのは仕事の内容ばかりではないのだ……。
さらにヒヨの学校の友達の親と話をしていてよく気が付く“反対”は、自分の子供のことをとにかく人前でよく褒めることだ。
「うちのジョンは、すごく優しいの」とか「うちのメリーは、覚えるのが速いの」といった具合に。
日本ではあまり人前で自分の身内を褒めることは少ないので多少違和感があるが、実は自慢するというよりは、客観的に自分の子供を見て評価しているようにも見受けられる。
日本では「愚息」とか「愚妻」という表現があるが(日本でも既に死語?)、もしオーストラリアでこれを言ってしまいそうになったときは絶対に注意が必要だ。例え他人の身内であっても、このようなことを人前で言う人間は相当疑われるに違いない。
でも、もし言いそうになってしまったときはこうすればいい。
少し発音を変えて、
「グゥ~!息」、「グゥ~!妻」。
これで意味までしっかりと“反対”になり、丸く収まるはずだ。
今までは、この時期になるとあまり深く考えもせずにただ「もう秋だなー」などと思ったものだったが、今年は違う。南半球で「やっと春だな!」と思いながら見上げる初めての十五夜となるからだ。
……のはずだったが、残念ながら日曜日のアデレードは荒天。台風を思わせる強風に吹き飛ばされそうになりながら夜空を見るも、ただ花粉を鼻に招き入れて苦しくなっただけとなり、敢え無く退散。くしゃみに耐えながら、翌日に期待を持ち越すこととした。
翌15日の月曜日の朝になっても強風は収まらず、おまけに寒くて雹(ひょう)まで降り積もる始末。
「今夜もダメかな」と思っていたところに、呼び鈴の付いていない我が家のドアが「ドン、ドン」と大きくノックされた。恐る恐るドアを開けてみると、音の主は月でも花粉でもなく、妻が20年近くも前にお世話になっていたオージーのホストファミリーのお父さん、お母さんだった。
雹(ひょう)が積もったのを見たのは初めてだ
今は既にリタイアし、オーストラリア中をキャンピングカーを引いて旅して回るという羨ましい生活を送っている夫妻が、その旅の途中で我が家に立ち寄ってくれたのだった。あまりに突然の出来事に、我が家の中は正に一足早く月からウサギが飛び出してきたような嬉しい騒ぎとなった。妻と私にとっては9年ぶりの再会となり、ヒヨとオトにとってはもちろん初対面だ。白い髭がトレードマークのお父さんは2人にとってはサンタクロースに見えたらしく、すぐに馴染んで楽しく遊んでもらっていた。子供にとっては“月よりダンゴ、ダンゴよりサンタ”といったところなのだろう。
突然やってきたオーストラリアのお父さん、お母さん
あっという間に夕方になり、急きょ現れたオーストラリアのおじいちゃん、おばあちゃんは、また次の日に会う約束をしてキャラバンパーク(キャンピングカーで宿泊する公園)に帰っていった。
そしてサンタクロースは十五夜をもプレゼントしてくれたのだった。
夜空には丸々とした満月がポッカリと浮かびあがっていた。1日遅れだがとてもきれいだ。南半球の寒空のもとで見る“ほぼ十五夜”はなかなか風情があるが、それは丸くてきれいなだけではない。実は月の“模様”は北半球にある日本と南半球のオーストラリアでは、上下逆さまに見えているのだ。そのため、日本ではウサギが立って餅をついているように見えるときは、オーストラリアではウサギは逆立ちして餅つきをしていることになる。ウサギも大変だ。
アデレードで見た月。ウサギはどこ?
少し調べてみると、どうやら月はほぼ天の赤道上を移動しているように見えるため、北半球から南を向いて見たときと、南半球から北を向いて見たときとでは、月の模様が上下逆さまに見えることになるのだそうだ。さらにそれだけではなく、同じ日の月の欠け具合も、北半球と南半球とでは右と左が反対(左右非対称)に見えることになるという。
これは、なかなかおもしろい体験だ。
だが、悲しいかな、日本で見ていた月の模様が今となっては思い出せない。月の模様がウサギの餅つきに見えたこともない……。
ところで、オーストラリアでは“反対になる”ものは他にもある。
よく知られているのは、洗面台などの排水溝に水が落ちていくときに見られる“渦”だ。
地球の自転の影響によって、日本だと時計回りの“渦”が、オーストラリアでは反時計回りとなる。
あと、北の方が暖かいことも日本とは反対だ。オーストラリアで部屋の配置などを考えるときは北と南に要注意だ。私の、一見明るく聞こえる“南向きの仕事部屋”は寒い。冬ばかりでなく春となった今でも、とても寒い。お寒いのは仕事の内容ばかりではないのだ……。
さらにヒヨの学校の友達の親と話をしていてよく気が付く“反対”は、自分の子供のことをとにかく人前でよく褒めることだ。
「うちのジョンは、すごく優しいの」とか「うちのメリーは、覚えるのが速いの」といった具合に。
日本ではあまり人前で自分の身内を褒めることは少ないので多少違和感があるが、実は自慢するというよりは、客観的に自分の子供を見て評価しているようにも見受けられる。
日本では「愚息」とか「愚妻」という表現があるが(日本でも既に死語?)、もしオーストラリアでこれを言ってしまいそうになったときは絶対に注意が必要だ。例え他人の身内であっても、このようなことを人前で言う人間は相当疑われるに違いない。
でも、もし言いそうになってしまったときはこうすればいい。
少し発音を変えて、
「グゥ~!息」、「グゥ~!妻」。
これで意味までしっかりと“反対”になり、丸く収まるはずだ。



この記事へのコメント
私も以前住んでいたときは少々混乱し、挙句の果て「太陽はどちらから昇るんだ???」とまぬけな疑問を友達と話したことを思い出しました(笑)
そうそう、混乱しますよね。
我が家の場合、妻が「南半球では北と南が反対になるから、右が西で…」などとたまに言い出すのでビックリです。かく言う私も先日、南の空を眺めながら1人日本に思いを馳せていました。
あっ、そっちは南極だった…。